恋と夢と愛と 第二幕
少女漫画原作のドラマ【王子様に恋して】の撮影が始まった。
「カット!もう一回。」
私とダブル主演を務める、野津くんとのシーンで何度もNGを出すアリサちゃんに、現場の空気が重くなって来ていた。
アリサちゃんが演じるのは、学園のマドンナ。
モデルのアリサちゃんは、誰が見ても美人だとは思うが、台詞が棒読みで感情が入ってない。
表情が固くぎこちない。
現場の空気に萎縮してる。
私は撮影前に原作漫画を全巻買い、何度も読んですっかりファンになった。
原作者の先生が見学に来てくれて、サインをお願いしたら、快く応じて書いて下さった。
部屋に飾って大切にしてる。
「やる気無いだろ。」
隣で腕を組んで見てる永遠は、厳しい目を向けた。
キャスティングに事務所の力が働くのは、まぁ良くある事だ。
モデルから女優として、売り出したいのは分かるのだが、演技経験の少ないアリサちゃんを、準主役に据えたのはどうかと……。
私と永遠は子役出身。
野津くんは本業がアイドルだが、きちんと経験を積み役作りにも積極的だった。
アリサちゃんだけ、浮いて見えた。
「やめなよ。」
「この現場にいる全員が思ってる事だ。事務所のゴリ押しだろうが、実力が伴ってたら不満は出ない。」
……それはごもっとも。
監督が少し早いが休憩だと、撮影は一時間後に再開する事になった。
「今日の弁当なんだろうな。」
呑気な永遠に、……どついてやろうかと。
永遠は四歳からこの仕事をしてる。
感覚の天才肌だから、他人の気持ちを思いやれない、無神経なところがあった。