恋と夢と愛と 第二幕
トイレに行って戻ろうとしてると、なんで出来ないんだと、頭ごなしに怒る声が聞こえて来た。
校舎の裏でマネージャーらしき男の人に、アリサちゃんが叱責されてる現場に遭遇した。
実際に使われてる校舎で撮影していて、撮影出来る時間が決まっており、撮影スケジュールはタイトで、あまり余裕が無いのに、アリサちゃんの所為で押してる。
事務所の人間は、何故監督の言う通り出来ないのかとアリサちゃんを責める。
アリサちゃんはどうする事も出来ない。
悪循環に陥っていた。
個人の楽屋は無く、各教室を大部屋として使ってる。
「野津くん、ちょっと。」
他の生徒役が近くにいるので、ドアの影から隠れて小声で野津くんを手招く。
野津くんはスマホをポケットにしまい、教室から出て来た。
私がなんて声を掛けても、逆効果にしかならないと思った。
「これ、アリサちゃんに渡して。」
「……トマトジュース、ですか。」
近くのコンビニに走って、ダッシュで買って戻って来た。
「トマトが好きだって、公式プロフィールに載ってた。」
コンビニにトマト、そのままは売ってなかった。
ジュースでも元気が出てくれると、良いんだけど……。
「お願いね。」
「分かりました。渡して来ます。」
「さっきまで、校舎の裏にいたから!」
伝え忘れてたと廊下を歩いてく、野津くんの背中に言うと、野津くんは振り返らず、手に持つパックのトマトジュースを掲げ了解だと応えた。
野津くんの背中が頼もしく見えた。