魔王秘書は魔王を殺しました〜勇者一行編〜
エピソード4:盗賊
俺様が「そいつら」に会ったのは勇者一行の一人として、勇者達と旅を初めて4か月が経った頃だった。
今考えれば、魔王と部下のくせして、よく動いてるなと思う。
「オーナじゃねぇか。こんなところで会うなんてな」
「おやおや、本当にこんなところで会うなんて」
炎の聖女様と呼ばれるようになったユリアから聞いた名前。夜の裏道で大怪我をして倒れていたサラから聞いた話。アレスト・オーナについての話は碌な話がなくて、でも、俺様達勇者一行にとっては話題が尽きない存在だった。
そして、サラから話を聞いてから毎週、オーナは俺様達の前によく姿を現すようになった。
なんで、なんて全員が思っていた。サラはオーナが会いに来るようになった理由に察しがついていたみたいだけど、何度問い詰めても何も言わなかった。
「アル、「アレストだよ、レオナ」……はい」
「そいつは?」
「彼は私の部下、というか仲間?かな」
「はじめまして、コゥルさん。アレスト様の部下のレオナと申します。よろしくお願いいたします」
俺様が他の奴らがいないときにオーナにあったのはこのときが初めてだった。
「しっかし、あんた、何してたんだ? 見たところ、お偉いところの人らのように見えるけど、御貴族様をぶちのめして何してたんだ?」
「捜し物をしてまして。ちょうどこの御屋敷にあるという話を聞いてね。コゥルさんは仕事、だと推測するけど合ってるかな」
「合っちゃいるが、会いたくはなかったんだよなぁ、ここで」
盗賊ギルドからの依頼で潜入した貴族の屋敷。汚職塗れの貴族様が賄賂として貰っていた金品を盗んでくるという依頼の最中だった。屋敷に潜入して、貴族様を眠らせようと思い、主人の部屋に侵入したら、そこにはオーナとオーナの部下、レオナの姿があった。
オーナは貴族様を殴り倒していた。レオナは部屋の中を物色していた。
「……正直さぁ、俺様、あんたのこと信用できねぇんだよな。サライスもユリアもサラもあんたに気ぃ許してっけどさぁ、怪しすぎるじゃん、あんた」
「アレスト様……」
「レオナ、その「それはあなたの所業が悪いです」みたいな顔止めてくれない? コゥルさんの言い分はよくよく分かるけども」
「んで、だから余計にこんなところであんたに会うとあんたを怪しく思うわけ」
「うーん、否定できないのが悲しいな」
俺様の言葉にオーナは困ったように笑う。その手は気絶した貴族様を雑に投げ捨てていた。あまりに遠慮がない。
オーナは貴族様を投げ捨てると、俺様とレオナ同じく部屋のなかの物の物色を始める。俺様は目的の金品をいくつか見つける。
「あんたが狙ってんのが俺の目的の金品の一つならさらに怪しくなるんだけど、あんたの狙いは何だ?」
「答える必要あるかなぁ」
「別に答えなくてもいいぜ。俺様からの疑いが深くなるだけだからな」
「アレスト様、無理に答える必要は」
「レイソード、ジュークポーション、レッドマント。山ほどあるけど、何がお望みなんだ?」
見つかった品をちょうど側にいたレオナに投げ渡す。
オーナは探していた場所から俺様の方に視線を向けてきて、俺様のそんな行動に目を見開く。だが、すぐに小さく笑う。煮え切らない顔。自分が悪いかのような苦笑。
ああ、苛つく、と思ったことは今でも忘れられない。
「ブースティングストーン。盗賊アクセルの唯一の武器だよ」
あまりにも盗賊間では有名な、しかし、盗賊にはあまりにも役に立たない魔輝石。能力値を一時的に底上げする石。盗賊には本来ならまったく、役に立たない魔輝石だった。
「あ、アレスト様、これ」
「あった? …………ああ、これだ。本物だ」
先代勇者一行の盗賊アクセルしか使えなかったとされた魔輝石。憧れではあるけれど、盗賊にとっては無用の長物だとされたもの。
予想外の探し物に驚いていれば、側にいたレオナが紅色の輝石を見つけていた。レオナはオーナにそれを渡し、オーナはそれを月夜に翳す。月の光が透けて見えてくる。それはあまりにも噂に聞いていた「ブースティングストーン」そのものだった。
「良かった。アクセルが亡くなった後に紛失したとは聞いたけど、盗まれてたんだ」
「本当に良かったですね」
「ああ、本当にね。これでアクセルも報われるだろう、コゥルさんが持っていれば」
「は?」
驚きのあまり言葉の出ない俺様の掌にオーナがブースティングストーンを握らせる。
盗賊アクセルにしか使えなかったものが一介の盗賊の俺様に使えるわけがない。そう言おうと思ってブースティングストーンに向けていた視線をオーナの方に向ければ彼は嬉しそうだった。
その表情はあまりにも悲しそうで、泣きそうで。
「これはコゥルさんなら扱える。だって、勇者一行の盗賊コゥルなんだから」
「…………ああ、もう分かったよ、くっそっ」
その顔の理由が、魔王アルレストがそんな顔をする理由なんて、そのときは考えもつかなかった。
ああ、あのとき、問いただしておけばと未だに後悔が残っている。
今考えれば、魔王と部下のくせして、よく動いてるなと思う。
「オーナじゃねぇか。こんなところで会うなんてな」
「おやおや、本当にこんなところで会うなんて」
炎の聖女様と呼ばれるようになったユリアから聞いた名前。夜の裏道で大怪我をして倒れていたサラから聞いた話。アレスト・オーナについての話は碌な話がなくて、でも、俺様達勇者一行にとっては話題が尽きない存在だった。
そして、サラから話を聞いてから毎週、オーナは俺様達の前によく姿を現すようになった。
なんで、なんて全員が思っていた。サラはオーナが会いに来るようになった理由に察しがついていたみたいだけど、何度問い詰めても何も言わなかった。
「アル、「アレストだよ、レオナ」……はい」
「そいつは?」
「彼は私の部下、というか仲間?かな」
「はじめまして、コゥルさん。アレスト様の部下のレオナと申します。よろしくお願いいたします」
俺様が他の奴らがいないときにオーナにあったのはこのときが初めてだった。
「しっかし、あんた、何してたんだ? 見たところ、お偉いところの人らのように見えるけど、御貴族様をぶちのめして何してたんだ?」
「捜し物をしてまして。ちょうどこの御屋敷にあるという話を聞いてね。コゥルさんは仕事、だと推測するけど合ってるかな」
「合っちゃいるが、会いたくはなかったんだよなぁ、ここで」
盗賊ギルドからの依頼で潜入した貴族の屋敷。汚職塗れの貴族様が賄賂として貰っていた金品を盗んでくるという依頼の最中だった。屋敷に潜入して、貴族様を眠らせようと思い、主人の部屋に侵入したら、そこにはオーナとオーナの部下、レオナの姿があった。
オーナは貴族様を殴り倒していた。レオナは部屋の中を物色していた。
「……正直さぁ、俺様、あんたのこと信用できねぇんだよな。サライスもユリアもサラもあんたに気ぃ許してっけどさぁ、怪しすぎるじゃん、あんた」
「アレスト様……」
「レオナ、その「それはあなたの所業が悪いです」みたいな顔止めてくれない? コゥルさんの言い分はよくよく分かるけども」
「んで、だから余計にこんなところであんたに会うとあんたを怪しく思うわけ」
「うーん、否定できないのが悲しいな」
俺様の言葉にオーナは困ったように笑う。その手は気絶した貴族様を雑に投げ捨てていた。あまりに遠慮がない。
オーナは貴族様を投げ捨てると、俺様とレオナ同じく部屋のなかの物の物色を始める。俺様は目的の金品をいくつか見つける。
「あんたが狙ってんのが俺の目的の金品の一つならさらに怪しくなるんだけど、あんたの狙いは何だ?」
「答える必要あるかなぁ」
「別に答えなくてもいいぜ。俺様からの疑いが深くなるだけだからな」
「アレスト様、無理に答える必要は」
「レイソード、ジュークポーション、レッドマント。山ほどあるけど、何がお望みなんだ?」
見つかった品をちょうど側にいたレオナに投げ渡す。
オーナは探していた場所から俺様の方に視線を向けてきて、俺様のそんな行動に目を見開く。だが、すぐに小さく笑う。煮え切らない顔。自分が悪いかのような苦笑。
ああ、苛つく、と思ったことは今でも忘れられない。
「ブースティングストーン。盗賊アクセルの唯一の武器だよ」
あまりにも盗賊間では有名な、しかし、盗賊にはあまりにも役に立たない魔輝石。能力値を一時的に底上げする石。盗賊には本来ならまったく、役に立たない魔輝石だった。
「あ、アレスト様、これ」
「あった? …………ああ、これだ。本物だ」
先代勇者一行の盗賊アクセルしか使えなかったとされた魔輝石。憧れではあるけれど、盗賊にとっては無用の長物だとされたもの。
予想外の探し物に驚いていれば、側にいたレオナが紅色の輝石を見つけていた。レオナはオーナにそれを渡し、オーナはそれを月夜に翳す。月の光が透けて見えてくる。それはあまりにも噂に聞いていた「ブースティングストーン」そのものだった。
「良かった。アクセルが亡くなった後に紛失したとは聞いたけど、盗まれてたんだ」
「本当に良かったですね」
「ああ、本当にね。これでアクセルも報われるだろう、コゥルさんが持っていれば」
「は?」
驚きのあまり言葉の出ない俺様の掌にオーナがブースティングストーンを握らせる。
盗賊アクセルにしか使えなかったものが一介の盗賊の俺様に使えるわけがない。そう言おうと思ってブースティングストーンに向けていた視線をオーナの方に向ければ彼は嬉しそうだった。
その表情はあまりにも悲しそうで、泣きそうで。
「これはコゥルさんなら扱える。だって、勇者一行の盗賊コゥルなんだから」
「…………ああ、もう分かったよ、くっそっ」
その顔の理由が、魔王アルレストがそんな顔をする理由なんて、そのときは考えもつかなかった。
ああ、あのとき、問いただしておけばと未だに後悔が残っている。