感情が味で分かる令嬢は、偽りの愛を見抜きます~婚約者は腐った生ゴミ味、冷酷な第二王子は極上の味でした~【短編】
「シャルロッテ嬢、君は今日も美しいね」

「あ、ありがとうございます……」

「そのきらめく銀色の髪は、月光に照らされた女神像のような神聖さを感じさせるよ」

「お、お上手ですこと……」

 婚約者の愛の囁き。
 二人きりの甘い空間。

 本来ならば胸がときめく時間だが、シャルロッテ侯爵令嬢にとっては拷問と言っていいほどの苦行の時間だった。
 そんなシャルロッテの心の中など知らない婚約者のエドゥアルト第一王子は、彼女の艶のある髪の束を取って優しく口づけをする。

「僕はいつでも君のことを想っているよ」

「そんな……。わたくしには勿体ないお言葉ですわ」

 シャルロッテは、ほんのり上気した顔を少し俯かせる。

「ははは。そんなに照れないで? 君は僕の大切な婚約者だからね」

「……」

 シャルロッテの端正な顔が、ますます赤く色付いた。その様子は、愛しの婚約者の愛の囁きにはにかんでいる令嬢そのものだったが……。

(も、もう限界……。息が……!)

「おや」

 その時、エドゥアルトが柱時計の針を見て、少し目を見開いた。

「もうこんな時間だね。僕は生徒会の仕事があるから、もう少し学園に残るよ」

「承知いたしました。では、わたくしは王宮にてお妃教育がございますので、お先に失礼いたしますわ」

 シャルロッテは上品な笑顔で婚約者を見送る。
 エドゥアルトは少しも名残惜しそうな素振りを見せず、早足で校舎の中へと戻って行った。

 すっかり彼の姿が見えなくなると、

「っぷはああぁぁぁ〜〜〜〜〜っっ!!」

 シャルロッテは大きく息を吸って、ずっと止めていた呼吸を再開した。

「今日の殿下の味(・・・・)も、ゲロマズでしたわぁ〜〜……」


< 1 / 12 >

この作品をシェア

pagetop