感情が味で分かる令嬢は、偽りの愛を見抜きます~婚約者は腐った生ゴミ味、冷酷な第二王子は極上の味でした~【短編】





 シャルロッテ侯爵令嬢は、誰にも言えない特殊能力を持っていた。
 それは、会話をしている相手の本当の感情(・・・・・)が、味となって舌の上に広がる能力だ。

 彼女に好意を持っている者の味はとびきり美味しく、逆に嫌悪を抱いている者の味は非常に不味かった。
 例えば、冷淡な態度の者の言葉が甘い綿菓子のようであったり、笑顔で優しい言葉を放つ者が痺れるほどに苦かったり。

 舌をつたう味は、相手の隠している感情を正確に表現していたのだった。
 なので、相手が本音を隠していても、彼女には全てお見通しだ。

 婚約者のエドゥアルト第一王子は、生ゴミを数日間生暖かい場所で放置して腐敗が進んで虫もわいて、腐った魚や発酵した動物の死骸や、何年も風呂に入っていない浮浪者の体臭やドブの匂いが混じったような……とにかく筆舌に尽くしがたい味だった。

 即ち、超超超超超ゲロマズである。

 その答えが示すものは、エドゥアルトがシャルロッテのことを心の底から(・・・・・)嫌っている……という証左だった。

 彼女としても、自分を嫌う者と一生を添い遂げるのは塗炭(とたん)の苦しみである。
 なぜなら、死ぬまでくっっっそゲロッマズッッ!!な味を摂取し続けなければいけないからだ。

(そんなの、あんまりですわ……)

 シャルロッテの肺の中に新鮮な空気が満たされて、彼女はやっと落ち着きを取り戻した。
 これまで何も意識してこなかった大気という見えない存在が、今ではとても愛おしく感じる。

 貴族子女の義務である学園に通っている今、彼女は毎日エドゥアルトと顔を合わせていた。
 婚約者なのだから、当然いくらかの会話もかわす。その度に悶絶するような地獄の苦しみを味わって、婚姻後はこの苦痛がもっと増えるのだろうかと考えると、絶望した気分になるのだった。


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