リーガル・ラブ〜イケメン弁護士はお堅い彼女のハートを盗みたい〜
ノンアルコールのシャンパンで乾杯し、美味しいフレンチのフルコースを味わう。

どれを食べても「美味しい!」と目を輝かせる優香に、壮志もいつにも増して食事を楽しんでいた。

「よろしければデザートはあちらのソファでどうぞ」

スタッフに促されて、壮志は優香の手を取り、窓に面したソファに並んで座る。

ローテーブルに並べられたデザートと紅茶を味わっていると、スタッフが部屋の照明をグッと絞った。

「すっかり夜になりましたね。月がきれい」

優香がそう言った時、パッと夜空に花火が浮かび上がった。

「えっ、な、何?」

ドン!という音と共に次々と打ち上げられる花火が、鮮やかに夜空を彩る。

「わあ、素敵……」

優香は両手を組んでうっとりと見とれた。

海上で打ち上がる花火は、水面をギリギリまで使って華やかに大輪の花を咲かせる。

カラフルでユニークで、時には金一色でシンプルにゴージャスに。

ラストは圧巻の迫力でたたみかけるように打ち上がり、空がキラキラと明るく輝いた。

「とってもきれいでしたね」

優香が満面の笑みで壮志を振り返る。

「ああ。楽しんでもらえた?」
「はい、それはもう」
「よかった。昨日はコンシェルジュとして仕事をこなしながらだったから、花火も楽しめなかっただろう?」

そう言うと優香は「え……」と言葉を失くしてから、信じられないとばかりに壮志を問い詰めた。

「まさか古賀様、そのために今夜ここに? どうしてそんな」
「どうしてって……。好きな子には喜んでもらいたいし、少しでも一緒にいたいと思うからだよ」
「好きな、子?」
「あれ、忘れた? 俺が君を好きだってこと」

すると優香は、困ったようにうつむいた。

「ひょっとして、迷惑だった?」

静かに尋ねると、優香は黙ったまま首を振る。

「それなら改めて君に告げるよ。俺は心から君が好きだ。誰よりも愛おしいし、どんな時もそばにいたい。こんな感情が自分に芽生えたのは初めてなんだ。どうか俺とつき合ってほしい」

返事を聞かせてくれる?と顔を覗き込むと、優香は目に涙を溜めて壮志を見上げた。

何かを言おうとして戸惑っているようにも見える。

「俺のことが、嫌い?」
「まさか、そんな」
「それなら、今はまだ好きだと思えなくてもいい。俺との時間を重ねてくれないか?」
「あの、私……」
「うん、何?」

壮志は優香の目からこぼれ落ちた涙を指先で拭い、優しく微笑んで言葉を待つ。

「私、以前勤めていた単身者向けのマンションで、ある住人の男性によく話しかけられました。私はコンシェルジュとしてどなたにも変わらず丁寧に接しようと思っていたのですが、しばらくすると噂が広まったのです。私がその男性に取り入って、結婚しようと企んでいると」

思わず壮志はハッと息を呑んだ。
優香はポロポロと涙をこぼしながら声を震わせる。

「そんなつもりは全くなかったのに。誰に対しても笑顔で接していようと思っていただけなのに。でも、そんな噂が立ってから、女性の住人の方から冷たくされてしまって……。どうすればよかったのか、今でもわかりません。だから私は、コンシェルジュとして、住人の方とのおつき合いは考えられないんです。もうあんな思いはしたくない」

優香の言葉に壮志は胸が痛んだ。

誰よりも志高くコンシェルジュの仕事に向き合っている優香が、そんな目に遭っていたなんて。

いつもそばで守ってやりたい。
傷ついたその心を癒やしてやりたい。
もう二度と辛い思いはさせない。

けれど、そのためにはどうすればいいのか。

「俺のことが嫌いで、交際を断るのではないんだよね?」
「はい、もちろんです」
「それなら他の誰にも気づかれないように、俺に君を守らせてほしい」

え?と優香が顔を上げる。

涙で潤んだ瞳がいじらしく、その健気さに思わずギュッと抱きしめた。

「マンションでは会わないようにする。こんなふうに外で俺と会ってくれないか?」
「こんなふうに?」
「そう。まだまだ色んなホテルを見て回りたいだろう? きれいな景色を見て気分転換も必要だ。俺にその手伝いをさせてほしい」

優香はじっと壮志の言葉に耳を傾けている。

壮志はそっと身体を離して優香の顔を覗き込んだ。

「何も心配しなくていい。俺は必ず君を守ると誓う。俺を信じてくれないか?」

瞳に語りかけるように真っ直ぐ見つめると、やがて優香がゆっくりと頷いた。

「ありがとう」

壮志は微笑んで優香の頭を抱き寄せる。

「一人で辛かったな。もう大丈夫だ。どんな時も俺がそばにいる」
「はい、ありがとうございます」

涙で声を詰まらせる優香を抱きしめ、壮志は耳元でささやいた。

「誰よりも君が好きだよ、……優香」

腕の中で小さく頷く優香の頭を優しくなでてから、壮志はそっとその髪に口づけた。
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