銀河の雫
「しずくさんって、天然?」
おにぎりをもぐもぐと頬張りながら、薫さんが横目で私を見てくる。
「最初はペンケースを入れたの。だけど探し物をして全部出して……」
必死に言い訳をしながら、顔が熱くなるのを感じた。
『お疲れ様です』
『例のお客様から入電あった?』
パイプ椅子が引かれる音や賑やかな談笑が聞こえ始める。
それらが重なり合い、静かだった空間はあっという間に喧噪に包まれた。
「薫さんが優秀過ぎて、ちょっと引いた」
ご飯を口に運び、彼女を横目で見る。
「何それ……まぁ、ずっと金融業界にいたからね」
今度は串に刺さった唐揚げを美味しそうに齧(かじ)っている。
「自信失うわ」
「んなことないって」
ふと、疑問が湧いた。
「でも薫さんみたいな人が、どうして派遣なんかに?」
「うん。……将来、起業したいと思ってたし」
食べ終えた彼女は、バッグからスマホを取り出しながら答える。
「起業って……どんな?」
「うん、アフターケアシェアハウス。就労支援のNPO法人を立ち上げようかと……」
「……そうなの? なんか、よく分かんないけど……すごいね」
「そう? ……でも、起業する前にやっておきたいことがあったんだ」
うつむいたまま、ポツリと打ち明けた。
「やっておきたいこと?」
箸を止めて彼女に顔を向ける。