わすれもの

 給食のない職員室の昼食は、貧相なものだ。
 カップ麺を食べる先生はいっぱいいるし、みんなコンビニの袋からガサガサと何かを取り出している。
 私は昼くらい、休憩時間は外に出たい。
 幸いに、勤務校の目の前に町の寿司屋があるし、最近、近所の蕎麦屋や本格的なカレー屋も開拓した。
 すぐそこのカフェは……提供が遅すぎるので、この前の会議に間に合わなかった。
 かなり頑張れば、遠くに安くて美味くて遅い洋食屋がある。
 洋食屋って、響きもそうだけど、レトロな感じがして、食事以上になにかある。
 そこの店の大将が一人でやっていれば、遅いのは仕方がない。
 ここは、長期休業中しか行けない。
 周りの先生から、食べる店を知ってる人間と見られるようになった。
 少しは、なりたかった自分になれたのかな?

 彼女と入った洋食屋の場所は、もう覚えていない。
 この前、そのエリアを探しても、全くわからないくらいに景色は変わってしまっていた。

 彼女と入った店は、静かで落ち着いていた。
 メニューを見て、無難なものにした。
 確かハンバーグだった。
 当時、ドリアやポトフとか、馴染みがなかった。
 彼女と何を話したっけ。
 思い出せないのが悔しくて悲しい。
 今回も奢ってもらった。
 彼女はよく、「出世払いね」と言っていたっけ。

 ちょっと暗くなった駅前を二人で歩いた。
 数時間前と比べると、話すテンポも、歩く距離も近くなった気がする。
 別れ際、「また会おうよ」って言ってくれた。
 僕は改札に入る。
 彼女は、改札の外から手を振ってくれたので、思い切り振り返した。
 お調子者かもしれないけど、僕はそうしないといけなかった気がしたから。
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