まだ青い彼
「あの後、一人になって考えたんだ。無理してつくった楽しい時間は別れてしまえば、手の中に残るのは無理したしわ寄せだけだなって。今は、えーっと……好きでいてくれることに油断してる」
広睦くんはへらっと笑った。
「油断してくれないと、広睦くんがしんどくなっちゃうから、嬉しいよ」
「まあ、あの頃はかっこつけてたしな。かっこつけないと付き合ってもらえない、まであったし」
「あー……なるほど」
かっこつけてたのか。結構言いたい放題だった気もするけど……。まあいいか。
――――――
時々、もし広睦くんと別れていたら、と思うことがある。
あの時広睦くんが私に会いに来てくれなかったら。ずっとベンチで私に会えるまで通ってくれなかったら……。
広睦くんは涼しい顔をして前を向いて歩いていく。何事もなかったように、私はあなたにとって通過点の恋だった。私は、最後の恋だった――。そんな未来を想像して胸がぎゅっ痛くとなる。
「春美ちゃん、どうしたの。早くしないと俺帰っちゃうけど。明日の仕事のために帰っちゃうけど」
もっともらしく繰り返すからつい、試してしまう。
「ふうん、じゃあ、私はキスしてくれるまでここで待ってよう」
目をつぶってその場に立ったまま耳を澄ませた。……足音が遠ざかる。帰ろうとしてるな、これ。
「早くしろよ、お姉さん年取っちゃうだろ」
「あはははは」
ダッシュで戻って私に求めたものより過分なキスをしてくる。
――後悔はその時幸せじゃないからする。広睦くんと付き合わなかったことを後悔するのか、婚活が遅くなったことを後悔するのか。広睦くんを選んだことを後悔するのか。年の差を後悔するのか――。
――この日の小さな選択と大きな決心が、私の人生を変えたんだと後になって気づくことになる。
未来はわからない。
けれど、確かに幸せな今を過ごしている。
「結婚で一番大事なのはさ、何だと思う、春美ちゃん」
「ええ、お金じゃない? 」
「……二人の気持ちだって」
「随分ロマンチックなのね」
「違う違う。“二人の気持ちを大事にすること”どちらかの気持ちじゃなくてね」
窓の外では、爽やかな風が青葉を揺らしていた。
――――――end
広睦くんはへらっと笑った。
「油断してくれないと、広睦くんがしんどくなっちゃうから、嬉しいよ」
「まあ、あの頃はかっこつけてたしな。かっこつけないと付き合ってもらえない、まであったし」
「あー……なるほど」
かっこつけてたのか。結構言いたい放題だった気もするけど……。まあいいか。
――――――
時々、もし広睦くんと別れていたら、と思うことがある。
あの時広睦くんが私に会いに来てくれなかったら。ずっとベンチで私に会えるまで通ってくれなかったら……。
広睦くんは涼しい顔をして前を向いて歩いていく。何事もなかったように、私はあなたにとって通過点の恋だった。私は、最後の恋だった――。そんな未来を想像して胸がぎゅっ痛くとなる。
「春美ちゃん、どうしたの。早くしないと俺帰っちゃうけど。明日の仕事のために帰っちゃうけど」
もっともらしく繰り返すからつい、試してしまう。
「ふうん、じゃあ、私はキスしてくれるまでここで待ってよう」
目をつぶってその場に立ったまま耳を澄ませた。……足音が遠ざかる。帰ろうとしてるな、これ。
「早くしろよ、お姉さん年取っちゃうだろ」
「あはははは」
ダッシュで戻って私に求めたものより過分なキスをしてくる。
――後悔はその時幸せじゃないからする。広睦くんと付き合わなかったことを後悔するのか、婚活が遅くなったことを後悔するのか。広睦くんを選んだことを後悔するのか。年の差を後悔するのか――。
――この日の小さな選択と大きな決心が、私の人生を変えたんだと後になって気づくことになる。
未来はわからない。
けれど、確かに幸せな今を過ごしている。
「結婚で一番大事なのはさ、何だと思う、春美ちゃん」
「ええ、お金じゃない? 」
「……二人の気持ちだって」
「随分ロマンチックなのね」
「違う違う。“二人の気持ちを大事にすること”どちらかの気持ちじゃなくてね」
窓の外では、爽やかな風が青葉を揺らしていた。
――――――end


