まだ青い彼
「報告してないんじゃなくて……報告できることが無いの」

 広睦くんが眉間に皺を寄せる。ん?と声を出した。

「どういうことですか」
「まだ、誰とも会っていないのよ。探してはいるけどなかなかうまくかみ合わなくて」
「え、婚活ってもっとサクサク進むもんじゃないの」
「私もそう思ってたけど、なかなか。会うところまで進まないんだよ」

 わざと婚活していないんだと思われたくなくて焦って説明する。

「そっか。いや、俺としてはその方がいいんですけど。なんだ、そっか」

 広睦くんが素直に気持ちを口にするから、言い訳した自分の焦りもすっと引いてくる。そっか、別にちゃんと婚活してるよなんて言う必要もなくて、事実だけを報告すればいいんだ。

 広睦くんはそこから機嫌がよくなるわけでもなく、いつも通り美味しそうに注文した料理を口に運んでいた。よく食べるなーとその食べ方につい笑みが零れた。

「美味しそうに食べるね」
「うん。うまいよ。あと、やっぱ婚活進んでないの嬉しいなって思ってます。彼女の目標を否定するのも邪魔するのも良くないんで黙ってますけど。……いや、全然黙れてなかったわ」
「ふ、あははは。何それ」
「なんだよ。笑ってんなよ」

 安心して、まだ何も進んでないから。なんて慰めることも、婚活を諦めることも出来ずこの子も私も踏み込めず、かといって去ることも叶わず同じ時間を過ごす。純粋じゃなくなった年齢で純粋さを装ったって取り戻せないものがある。

 いつもどこかで線引きして、本当の私を心の奥に押しやって残った部分が全部だよって自分にも嘘を吐く。大人になるって良いことばかりじゃない。

 ただ、私に向けられる目に安心する。この関係はまだ終わらない。私が一生の相手を見つけるか、この子が私に飽きるまで……。
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