まだ青い彼
「なに、春美さん酔ってんな? 」
「酔ってないよ。そんな飲んでないし」

 そう言った後に思い直した。

「……酔ってるのかも。何か妙にセンチメンタル。かっこいいなぁ――……広睦くんは」

 感情のまま口にすると、広睦くんはハッと呆れるように笑った。

「なんだよ、それ。センチメンタルが俺かっこいいになるのかよ。そうですね、俺は顔がいい。だから声かけてくれたんだもんね」

 出会いを指摘されてカッと顔が熱くなる。

「それだけじゃないよ。それだけじゃ」
「嘘つけ、喋ったこともなかっただろうが」

 喋ったこともなかったね。……電車の中では。やっぱりベンチでのことはこの子の中では記憶にも残らない事だったんだ。

「あるよ。雰囲気とか、ほとんどの人がスマホ触ってるのに、触らずに窓の外見てるとことか」
「ほぼ見た目な、それ。まぁ外見も大事な判断材料だわな。俺も春美さんが綺麗なお姉さんじゃなかったらスルーだったかもね。……今は」
「今は? 」
「今は。どうなんですか、俺」
「かっこいいよ。近くで見ても、動いてても。こうやって見上げても」
「見た目かよ! 」
「あははは。ちょっと今のつっこみの瞬発力ったら」
「んだよ」

 少し拗ねたような横顔も綺麗で、これは言わない方がいいな。

「今は、そうだね。ならず者。それから口が達者。それと、意外。つきあったら案外癖もないし、嫌みを言わないんだーっと思って」
「あー、初対面で春美さんのこと年上だってわかってんのにいきなりため口きいたことまだ言ってんの。嫌みは封印してますよ。だって、とりあえずは俺の希望聞いてもらえたから一旦は満足してる」
「希望? 」
「そう、これ」

 広睦くんはふわり微笑んで私を抱き寄せた。

「ちょっとコーヒー、コーヒーが零れるでしょ」
「うん」

 うんとか言いながら全然わかってない態度でしっかりと抱き寄せる。気持ちがふわっと舞い上がる。
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