まだ青い彼
「あったけ」
「いやいや。暑い、でしょ。それ、飲んでるのアイスコーヒーだから」
「ん」

 広睦くんは私を後ろから抱きしめながら、私の持っている甘いコーヒーに刺さったストローに口をつけた。

「甘いな、めちゃくちゃ甘い」
 わずかに濡れた唇が至近距離にあって直視できずに目を逸らす。
「え、そんな甘いかな」
「甘い、甘い。俺の将来への見通しより甘い」
「……それは、本当に甘いわね」
「んだとー? 」
「あははは、自分で言ったくせに」
「俺の今の気持ちは苦くなった」
「はははー、もうやめて。別にうまくないから」

 近くで話されるとくすぐったくて身をよじるけど、離してくれる気はないみたいだ。それが気持ちを余計にふわふわさせる。広睦くんの感情を受け取っているみたいだ。

「ねえ、しつこいけど、聞いていい? 婚活ってさ何してんの? アプリ? 」
「えっとね。アプリメインかな。友達に誰か紹介してって声かけたりもしてる」
 散々だったけど……。

「へえ、アプリってマッチング? 」
「そうそう。メッセージ何回かやり取りして、いいなって思ったら会う約束して何回か会って、そこから付き合うみたいな流れみたい。私も調べただけだけど」
「へぇ。俺の友達もやってる奴いたわ。SNSのDMで声かけたやつもいるし」
「そうなんだ。私の年はなかなか難しくもなってきていて。早くしなきゃね」

 学生でもなかなか出会いって無いんだろうか。そう思っていると、広睦くんの腕にぐっと力が入った。

「振られる理由が年齢だけなんだったら、何とかしてみせるよ」
「え……? 」

 聞き返すと同時に口を塞がれ、わずかに苦いコーヒーの味がする。
 は、と息が漏れるとそれを許す気がないようにキスが続けられた。

 自分の年に合った恋愛をして、自分の思い描く生活を実現していきたいと思っている。
 その私の計画を滞らせる厄介な感情。理性が、今まで生きてきた常識が、出した結論を忘れさせてしまう。もういいじゃないかなって……。ずっと夢の中にいたくなってしまう。

 
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