チャラ男も笑えば雑巾に当たる
顔面に張り付いた雑巾をつまんで退かした先に現れた形相に、誰もが凍りつく。
眉間に深く刻まれたシワ、穴が開きそうなほどにらみつけてくる鋭い目つき、こめかみに浮き出る血管、真っ赤に染まるしかめっ面。
それは今まで誰も見たことのなかった、怒りに満ちた犬井駆。
「……っ、」
ごめんなさい、と謝りたいのに、その瞳が冷たすぎて息が詰まる。
音にならない声を絞り出そうとするけれど、重たい空気がそれを圧し潰す。
「……お、おい、なんかやべぇぞ空気」
「おおおおオレは悪くねーよ!大体おめぇが委員長を怒らせるから!」
「はあっ!? 最初にはじめたのはオマエだろ!」
「黙れ」
「「「ひいっ」」」
情けない大きなひそひそ声を遮って、男子らをかき分けて、静かに私の方へ迫ってくる犬井駆。
じり、じり、足が無意識に退く。
後ずさっても逃げ場なんてないのに。
すぐにかかとは壁にぶつかり、背中から黒板の冷たさがしみる。