チャラ男も笑えば雑巾に当たる
私たちのいる踊り場まで来て、私を囲う女子たちを一人ひとり見下ろす、冷たい瞳。
「ねえ、そこどいてくんない?」
言葉は依頼なのに口調は命令。
いつもの可愛らしくて甘いフェイスはどこにもない。
従うしかない、そんな空気の中で私の周りからササッとはけていく女子たち。
「っ…!」
突然、目の前が真っ暗になって混乱する。
顔面が固くて温かい何かにうもれてる。
激しい鼓動にぶつかって、息がつまる。
「なに突っ立ってんの?見ての通りお取り込みちゅーなんだけどお」
頭上からそんな声が聞こえた。
「い、行くわよッ……」
リーダー格のイラついた声がして、パタパタパタ、と複数の足音が遠ざかっていく。
すぐに沈黙が広がる。
「……、」
トクン、トクン、トクン、トクン、……
振動が肌を伝う。
私の音じゃない。
彼が。
犬井駆が、脈打つ音。
「……は、なし、て、」
背中から首の後ろ、そして肩へ回された力強い腕のせいでビクリとも動けない私はかろうじて声を出す。
「ごめんむりもう限界」
「っ、」
「なんで避けるの、さみしいよ」