未完成のワンフレーズ


ごめんね、せんせー。

ごめんね、タケちゃん。


こんなガキのこと放っておけばいいのに、タケちゃんはせんせーに殴りかかる私を止めてくれて。

せんせーは私の拳という想いを受け止めてくれる。



「⋯⋯嫌い、嫌い⋯神様なんかっ⋯⋯びょーきなんか⋯大っ嫌いだ!」



本当に神様がいるなら、聞いてやりたい。

どうして李仁を選んだのか。


急性骨髄性白血病という重い病気を、李仁というまだ十五歳の男の子に背負わせたのか。


「ありがとう、紗綾ちゃん。泣いてくれて」


俺は、もう泣けなくなってしまった――。


やっぱり嫌いだ、大っ嫌いだ。

せんせーにそんな悲しいことを言わせるなんて。


私、せんせー達の分の涙を流したいわけじゃないんだよ。泣きたいわけじゃないんだよ。

ただ、どうすればいいのか分からないだけ。


泣くことでしか感情を制御できない子供なだけ。



「紗綾ちゃん、李仁は一度だけ俺に言ってくれたんだ」

「うぅ⋯うぐっ⋯⋯っ」



床に蹲る私の頭を撫でながら、せんせーは子供に童話を読み聞かせるように言った。



『俺、生まれてきて良かったよ』



李仁はさ、いつも私が病室にいない間何を思っていたのかな。


私が病室に行けば、口では嫌がるけど顔は笑ってて。

ずっと元気だからさ、大丈夫なんだろうって思ってたけど。


私の知らない所で泣いていたのかな。苦しんでいたのかな。



『紗綾といる時間が、一番幸せだ』


そうだ、ギター。

ギターを弾けば目を覚ましてくれるかな。


また看護婦のおばちゃんからシールを貰ったからさ、ケースに貼ってあげる。


だから、お願い。

目を覚ましてよ、李仁。


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