未完成のワンフレーズ


「そんなお前に出血大サービス。ほい、これ」

「え、なにこれ⋯⋯これって、歌詞?」


乱雑に折り畳まれた紙を広げると、そこには少し背伸びをした表現の文章が並んでいた。


「あ⋯⋯っ」


思い出した。

李仁が歌っていた曲の歌詞。


いつも聞いた後思い出せなくなる歌詞だ。


『君が泣いた夜も
 君が笑った朝も
 全部、僕が覚えているから

 もし僕がいなくなっても
 どうか夜を嫌いにならないで
 もう一度、朝を迎えて

 君が生きていくその先で
 いつか僕のことを忘れてもいい
 それでも――

 君が笑ってくれるなら
 僕は何度だって、君に会いに行く』



「タケちゃん、私結局言えなかったんだぁ」


ベンチの背もたれにもたれかかったタケちゃんは、ただ静かに私の顔を見て続きを待った。


「貴方の歌のおかげで、私は生きたいと思えた。ってね」


いつもそう。
失ってから、ああしておけば良かったって後悔して。

でもどうしようもないから絶望する。


酷いよね。神様って。


死にたいと思っていた私を生かして。

生きたいと思っていた貴方を見殺しにするんだから。



「もう一回、聞きたいなぁ⋯⋯」



もう一度だけ、貴方の歌が聞きたい。

貴方の声で、貴方が弾くギターで聞きたい。


「やっぱり私が作ると別物になっちゃうんだよねー。なんか違うっていうかー」


李仁、李仁。

そっちの世界では、貴方も私も皆笑えてる?


死に戻りなんて、もうしちゃ駄目だよ。貴方はまた別の人生を歩むの。


でも、会いに来てくれてありがとう。

救ってくれて、笑わせてくれて。


愛を教えてくれて、ありがとう。


「⋯⋯はぁ、巫山戯んなっての」


幸せだとか、ありがとうとか、そんな言葉が欲しかったんじゃない。


私が欲しかったのは、

一緒に笑える明日だったの。


「人ってさ、嫌な記憶ばっかり覚えてるじゃん。だから、私はあいつを忘れないために」


一生、大嫌いでいるの。

そうすれば、大好きな気持ちも一緒に記憶に刻まれるからね―――。



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