ありがとう。大嫌い。
夜の歩道橋
「遠藤さん! 遠藤さん! もう、何処に行っちゃったの⋯⋯」
廊下の向こうから切羽詰まった看護婦の声がする。
息を殺して身を隠す物陰。
私は今日も懲りずに病室を抜け出して、看護婦とのかくれんぼに勤しんでいた。
「そっちは!?」
「いない! 待合室の方かもしれない!」
見当違いの方向に走り出す看護婦の背中を眺め、私は堪えきれずにくすっと笑った。
「ざんねーん。そっちに私はいないよっ」
物陰から立ち上がり、向かうのは看護婦達が走り出したのとは反対。
大きな総合病院の真ん中にある庭へと歩みを進める。
勝手口を開けて外に出れば、薬品臭い院内とは打って変わって清々しい空気に満ちていた。
「んー、やっぱり外は最高ー!」
あの看護婦達は今も院内を必死になって走っている。
それが見当違いだとは気づかないまま。
だって、
病人である私が外に出られるはずがないって思っているんだから。
「やっぱり、ここに来ると思った」
いや、違う。
ただ一人だけ、私がここにやって来ることを予想した人がいる。