未完成のワンフレーズ



この日の病室の扉は隙間無く閉じられていた。


でも、この扉を開けた先にあいつはいる。



「李仁ーっ! 今日も来てあげたよー!」



暗い顔をするのは扉の向こう側でだけ。


せめて、あいつに馬鹿にされないくらいには明るく取り繕わなきゃ。



だって、私は“ノンデリ”で“能天気”なんだから。



「⋯⋯うるせぇ」



ほんと、変わっちゃったよねぇ。

あんたが私がこうして大声だしながら病室に入っても怒らなくなるなんてさ。



相変わらず顔に「うぜぇ」って書いているけど。


それもある意味、“成長”なのかな。



「暗い暗い! 折角私が来てやったんだから笑って!」



バチンと音を立てて李仁の頬を両手で包む。

思っていた以上に温かくて、カイロを握っているみたいだ。



そう言えば、最近やけに寒くなってきたっけ。

今がえーっと、十一月とか?


⋯⋯って、もうそんなに季節進んでたんだ。



「お、そのチラシって来月のクリスマス会のやつ?」



どれだけ丸くなったとは言え頬を触れば振り解かれる。

その時、李仁が握っていたチラシが目に入った。



「⋯⋯俺達に演奏会をしてほしいんだと。お前、最近中庭でギター弾いてるだろ。小児科の子供達から人気だから、是非って」

「おおお! いいじゃんクリスマスっ! やろやろ! 絶対!」



そーいえば、去年もクリスマス会があったっけ。


その時は病室に籠もって四宮せんせーからもらったゲームしてたから、参加しなかったけど。


タケちゃんから聞いた話だと、子供達は看護師さんやお医者さんからプレゼントを貰えるんだよね。



そこで演奏会するのか。

李仁の曲を皆に広める大チャンスじゃんっ!



「いや、俺はいい」

「⋯⋯え?」


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