未完成のワンフレーズ
「俺はクリスマス会、行かない」



行かない、行かないってどういうこと?



「なん、で⋯?」

「⋯⋯紗綾。俺、“末期”なんだと」



キイィィィン―――。



開けっ放しの窓から風が入り込んで、ふわりと舞い上がったカーテンが李仁を覆う。


連れて行かれる。


そう思って手を伸ばした時、

ニット帽を被った李仁は、「どうした?」とでも言いたげな顔でそこにいた。



「⋯李仁が出ないなら、私も出ない」



伸ばしたてを下ろしながら、私は確かに言った。



「は? なんでだよ」


李仁の手からチラシを奪って、ぐしゃっと握り潰す。


意味がないんだ、こんなチラシ一枚に。



「ほんと、嫌い。何も分かってないよ、李仁」

「⋯⋯何が言いたい」



聞いちゃっていいの?

今の私、怒ってるんだよ。


人間って、怒りに任せれば何だってできるの。



「李仁と出ないんだったら意味がないって言ってんの。この曲は李仁のなの」



作曲者が隣りにいないのに、私が演奏することに何の意味があるって言うのさ。



「私一人で弾いて、皆に聞かせて、それで何になるの?」

「……紗綾」

「嫌だよ」




自分でも驚くくらい、声が震えていた。



「そんなの嫌に決まってるじゃん」

「…………」

「私、李仁と弾きたい。李仁の歌に合わせて弾きたい」




一度口にしてしまったら、止まらなくなった。



「また外で弾きたいし、皆に聞いてもらいたい⋯⋯クリスマスだって、一緒に出たい」



握り潰したチラシが、手の中でくしゃくしゃになる。
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