未完成のワンフレーズ
「何かあれば今日は俺達が近くにいる。無駄な心配はしなくていい」
だから紗綾ちゃんがギターを弾いたらいい。
四宮せんせーはそう言いたいのだろう。
子供達から期待の眼差しを向けられる。集団の中心から、李仁もまた私を見ていた。
「紗綾」
少ししゃがれていて、それでいて凛とした李仁の声が私の名前を紡ぎ出す。
「俺の歌、好きか?」
答えなんて分かってるけどな、って言いたげな顔で李仁は笑う。
その自信に満ち溢れた表情があまりにも彼らしくて、
私はタケちゃんの手を離して一歩踏み出していた。
「……うん。大好き」
古びたアコースティックギターを差し出されて、李仁の隣りに座った私は受け取ったギターを構えた。
それだけで子供達の興奮は最高潮になる。
「今日は何の曲聞かせてくれるのー?」
「⋯今日もこの曲だよ」
いつもの場所で、いつもの子供達の前で、いつものセリフを口にする。
そして、
そっとギターの弦を撫でるように弾いた。
「―――」
李仁。
ねえ、李仁。
やっぱりあんたはすごいよ。天才だよ。
あれだけギター下手だって李仁を揶揄ってたあの子達が、
李仁が歌い出すと黙って聞き始めるんだからさ。
それで、私はあんたの歌声を聞くと、
どうしても涙が止まらなくなるの⋯⋯。
「⋯⋯お兄さん、どーです? 初めて弟君の曲を聞いた感想は」
この世界には数え切れないほどの曲があって、歌手がいて、ギタリストがいるけどさ。
私、李仁の歌じゃないと感動しないよ。
李仁の歌が私に感動ってものが何なのかを教えてくれたから。
本当に感動する曲ってのはね、また聞きたいって思えるの。
それで、
生きてて良いんだって、もっと生きたいって思わせてくれるんだ。
「⋯⋯生きるって、何なんだろうな」