未完成のワンフレーズ
クリスマス会
十二月に入って、病院の中は毎日お祭り騒ぎだった。
まだ三週間は先のクリスマスを待ち遠しく思う子供達が、病院内を走り回っている。
「今日は生憎の天気だな」
今日の分の薬を机に並べて、タケちゃんは鉄柵でほとんど見えない窓の外を見た。
私もタケちゃんに習って窓の方に顔を向ける。
でも、真っ暗な窓に自分の顔が反射するだけ。
「小児科のガキンチョ等がお前の演奏楽しみにしてたぜ」
「⋯⋯うん」
梅雨でもないのに、最近やけに雨が多い。
こんな天気じゃ中庭になんて行けやしないし、かと言って院内で演奏会ができるわけでもない。
「最近ずっとそんな調子だが、何かあったのか?」
「別に⋯⋯」
「看護師として、患者の変化は担当医に報告することになってんだが」
だから教えろって? 言えると思ってんの?
李仁が変な写真を持っていたから問い詰めたら、いつか教えるってはぐらかされたことを?
その写真に写る皆が何処か変で、違和感しか無かったことを?
言えるわけ、ないじゃん。
「⋯⋯旭の弟んとこ、行ってねぇよな。あいつと何かあったのか」
「別に、何も無い」
「はあー⋯⋯埒が明かねぇ。話すまで俺ぁここにいるからな。いいか? いるからな」
そう言ってパイプ椅子にどっかりと座ると、じっと視線を向けてきた。
「林檎食うか?」
「⋯⋯いらない」
窓に映るタケちゃんが見える。林檎を頬張ってハムスターみたい。
あの写真に写っていたタケちゃんは、どっちかって言うと一口一口小さそう。
「⋯タケちゃん、ここにいる人達で未来を保証されてる人って、どれくらいいるんだろうね」
病気が治って退院して、学生は学校に通い直したり社会復帰したり。
またお年寄りは家族ともう一度生活を初めて、縁側でお茶を飲んだりさ。