未完成のワンフレーズ
そういうありふれた当たり前を確実に保証されてる人って、どれくらいいるのかな。
「誰だって未来はあるさ」
シャクっと音を立てて林檎を齧る音がする。
「生きるも死ぬも未来。病気が治るも治らないも未来」
「それ、看護師さんが言っていいやつ?」
「看護師だから言えることでもあるな。旭みたいな医者じゃあ、こんな事を言うのは許されねぇ」
そうだよね。確かに、直接病気を直すのはお医者さんの仕事だもん。
看護師のタケちゃんからしてみれば、病気を治せる治せないは専門外なんだ。
「⋯⋯怖い、んだなぁ⋯⋯⋯」
毎日、毎分、毎秒、色んな命が入れ替わってる。
命が産まれるのも、命が死ぬのも、
いつだって多いのは病院という場所だ。
「なんで、この世界はさ⋯⋯生きたいって思ってる人ほど、苦しませるんだろう⋯なんで、⋯⋯あいつに“末期”なんて言葉言わせるんだろう⋯⋯っ」
ねぇ、なんでこういう時に限ってさっちゃんは出てきてくれないの?
私の苦しみも悲しみも、全部さっちゃんが受け止めてくれたら良いのに。
そうすれば、私はこんなにも苦しまなくて済むのにさぁ。
酷いよ、酷いよ神様。
「言いたいことあんなら全部言え。俺が聞いててやる」
タケちゃんって私にそんな優しかったっけ。
四宮せんせーみたいに頭なんて撫でちゃってさぁ。反射でタケちゃんの顔見ちゃったじゃん。
「う、うぅ⋯⋯⋯うわあぁ⋯⋯っ!」
なんでタケちゃんの顔を見ないでいたか知ってる?
見ると泣きそうになるからだよ。窓に映るタケちゃんってば、林檎食べながら目元拭ってるんだもん。
意外と涙脆いし、繊細な心持ってるんだね。