未完成のワンフレーズ
「あはは! おにーちゃんかわいー」
私がいたテーブルを囲んでいた女児達も集まってきて、辺りはカオスな状況になる。
集まってきた女児は、私の真似をして次から次へと李仁の首に輪っかを通していった。
やめろ、とか。
集まってくんな、とか言ってる割に抵抗しないし。
めちゃくちゃ楽しそうに笑ってるし。
「李仁、楽しい?」
しれっと隣りに座っちゃったりなんてして。
そっぽを向いていた李仁は、不貞腐れた顔のまま私に向き直ってくれた。
「当日は、きっともっと楽しいよ」
明々後日のクリスマス当日は、サンタさんがプレゼントを持ってきてくれる。
それで皆でジングルベルを歌ったり、ベルを鳴らしたり、少しだけどお菓子も食べてさ。
絶対絶対、楽しいに決まってるよ。
「だからさ、演奏会⋯一緒に出よ?」
私ね、演奏会に出たいわけじゃないの。
李仁と一緒に出たいんだよ。
だって、李仁。貴方は歌いたいんでしょ?
誰かに聞いてほしいんでしょ?
聞かせたいんでしょ?
だから、あの時独りで中庭に出てギターを弾いていたんでしょ?
なら、次は独りじゃなくて、私も一緒に演奏させてよ。
「⋯⋯分かった」
「っ―――ほん、と?」
「ああ」
「じゃ、じゃあ約束してっ」
ずいっと顔を近づけて、前に李仁がしてくれたみたいに私も彼の手を握る。
それで、神様に祈るみたいに彼の手を額に近づけた。
「明日も、明後日も、その先も⋯⋯ずっと、ずっと歌っててね」
タケちゃんは神様なんて信じるなって言ってたけど、
神様っていう存在は、本来「見守っていてください」って伝える対象だったんだって。
それがいつからか「お願いを叶えてくれる存在」に変わちゃった。
でも、私は神様にお願いなんて言わないよ。
これからも「私達を見守っていて」って言うの。意地でも、生きてやるんだから。
「約束する。また明日も歌うから」
だから、もう泣くな―――⋯⋯。
そう言って李仁は、そっと私の頭を抱き寄せた。