未完成のワンフレーズ
「さあ! そろそろお姉ちゃんお兄ちゃんの演奏会だよ」
興奮状態の子供達をみっちゃんと看護師長が宥めて、
素直に座り始める子供達。
そんな彼らの前にギターを構えた私と、手ぶらの李仁。
用意されていたパイプイスに座って、私は一つ目のコードを奏でた。
「―――」
あれだけはしゃいでいた子供達がぽっかり口を開けて聞いてる。
せんせー達だって、微笑んで聞いてくれているよ。
「⋯⋯っ⋯⋯⋯」
俯いてギターを弾いているから気づかれてないかな。
なんでこんなに泣きそうになるんだろう。ただ、演奏をしてるだけなのにさ。
「⋯ありがとうございましたっ!」
涙も吹き飛ばすくらい笑うと、辺りから大きな拍手が飛んできた。
聞いていた子供達だけじゃない。
偶然通りかかった大人や、お見舞いに来た人、受付にいた看護師さん達。
皆、私達の演奏を聞いて笑っていた。
「紗綾」
「なーに?」
「やってよかった」
なに、なになに?
あの李仁がずいぶんと素直になっちゃってさぁ。
「ありがと」
ちびっ子達の輪の中に入って行っちゃったから、私は聞こえなかった。
李仁が泣きながら、そう言ってくれていたことなんて―――。