未完成のワンフレーズ


「⋯ね、李仁。楽しいね」


まだ始まってもないのに?

ううん、違う。


李仁が笑ってるから、隣りにいるから楽しいんだよ。


⋯⋯って。

せめてそこまで言えたらなあ、李仁があんなに辛そうな顔をすることもないだろうに。


「おーいっ! サンタさんが来るよー!」

「あっ、始まる始まる。ほらっ、行こう!」


李仁の手を握ったら、振り払われるかなぁって思ったんだけど。

ほんと丸くなったね。


背中を向けてるからどんな顔をしてるか分かんないけど、

きっと笑ってるんだろうなぁって、握ってる手から伝わってきたんだ。


私の気のせいだとしてもね。



「―――って、サンタさんってせんせー達なの?」

「せんせーじゃない、サンタだ」

「いや、せんせーじゃん。タケちゃんまで」


夢がない子供なんだろうなぁ、私って。

でも、ちびっ子達は大喜びだし、李仁も笑ってるし、

まあいっか。



「後はお前らだけだ。ガキ二人、こっち来い」


タケちゃ⋯⋯トナカイさんが呼んでる。

何故か手を繋いだままだったけど、互いに気づかないくらいこの時間が楽しくてしょうがないんだ。


「わあ! 私達にもプレゼント!?」

「なんか、デカくね?」


トナカイさんに呼ばれて行ってみれば、サンタさんから大きなプレゼントを貰えた。

振ってみると、なんかガサガサ言ってる。


無言の圧がサンタさんとトナカイさんから感じたから、

李仁と顔を見合わせて開けてみることにした。


「⋯⋯マフラー?」

「病衣だけじゃ薄着過ぎるからな。中庭で演奏する時に巻いておけば寒くないだろう」


夢はないけど単純な人間らしい。

マフラーをもらえたってだけで嬉しいのに、李仁と色違いなんだからもっと⋯ね。

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