【続編】ふたりの恋のそだてかた。

Ep.23 弱った心のなおしかた。

19:00。

爽真のマンションに入り込んで、玄関の鍵を開ける。
ドアが閉まってからもずっと薄暗い玄関に立っていると、間を置いて爽真がリビングのドアを開けた。

幽霊のようにぼうっとしている私にギョッとして、爽真が早足で近づいてくる。


「……瑠奈?来たなら入れば……」


ワンピースの裾を握り込んで俯いた私が顔を上げた時、爽真がまた驚いた顔をした。


「爽真ぁあ……」


怒られた後の子どもみたいな顰めっ面。
爽真が目の前まできたことに安心して、唐突にぎゅっと腰回りに抱きついた。

黙って強く抱き締める私に、爽真が狼狽している。
けれど満更でもなさそうで、大きな手がキャップ付きの私の頭に伸びる。

「珍し。なんかあった……」


ふわ、と爽真の鼻を掠めるバニラの香り。
ぴたりと、頭に乗りかけた手が止まった。


「……。なんか、シャンプーとか変えた?」

「え?」


何も変えてない。
だから言われて、爽真から離れて自分の腕や服、髪の匂いを確認する。

確かに、ほのかに感じる自分のじゃない匂い。
でも、鼻はその発生源を覚えていた。


「あー……これ、紫苑のだ。香水かな?
今日、撮影からそのままここに来てて――リテイク重ねまくったから、その時に移ったのかも」

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