【続編】ふたりの恋のそだてかた。
「自分の家でもないのに鍵使って入るの、すごい緊張するんだよ!」
「平気だろ、俺が渡したんだから」
「そういう問題じゃないの!」
ソファの横に荷物を置いて、洗面所を借りて手洗いを済ませる。
今日来た目的は、今爽真が手にしているもの――
御伽蘭子と爽真が主演の連ドラ、【夜が明けるまで、帰らない】の台本を見せてもらうことだ。
「よし、しっかり清めてきたから。よろしくお願いします」
洗面所から早足で戻ってくると、爽真の左隣に行儀良く座って両手を差し出す。
「なんだよそれ……ていうか、来るの予定より遅かったな。飛んでくるって言ってたのに」
ちょっと苦笑い混じりに、爽真は畏っている私の手に遠慮なく台本を乗せる。
「すぐ行きたかったんだけど、恭介くん……あぁ、春から入った事務所の後輩のね?質問攻めにあってなかなか帰れなくて……」
「恭介くん?」
神の台本を手に入れてほくほくしながらそう話すと、爽真の表情がぴたりと固まる。
けれど、感慨深く冊子の1ページ目を巡ろうとしている私はそれに気付かない。
「爽真は会ったことないか。ちょうどすれ違いだもんね。
中学校の授業で私の出てる舞台観て、憧れて入ってきてくれたんだって。――あ、この話あとでいい?ちゃんと台本読みたいから」
「……。いいけど」
爽真の声が淡白なのは、割といつものことだから。
その声色が“冷淡”だった微妙なニュアンスの違いも、今の私が察するのは無理だった。