【続編】ふたりの恋のそだてかた。
丸くなった爽真の両目に、気まずく反応を伺う私が映っている。
薄く開いた唇は、話す手段を失ったかのように何も発さない。


長すぎるほどに長い沈黙。
爽真が一度座り直した、ソファの布面が擦れる音がした。


「――――紫苑?」

「そう。……ラストにキスシーンもある」

「……」

「私、多分本当にやる。演技に入ったら、寸止めなんて温いことしない」

「……」


黙ったままの爽真の目元が、ひくりと引き攣る。
嫌なんだろうなって、痛いくらいわかってしまった。

「今までだって多少恋愛っぽいシーン演じてたし、今後も演技の世界で生きていくなら恋愛演技は避けられない。
だから爽真にはわかっててほしいって思うんだけど、今回は、その……相手が相手だから。爽真の気持ちを、尊重したい」

爽真の目が、迷いに揺らぐ。
切なく歪むその頬に、今触れるのは間違いな気がする。

「……映画、は……瑠奈がずっと目標にしてた仕事だろ?」
「うん」

「だから俺はそれを、一緒に喜びたい」
「……うん」

「でも紫苑は嫌」
「……だよね」

「でもそんな俺の感情で、瑠奈が夢に向かえないのはもっと嫌だ」

爽真の手が、頼りなく私に向かって伸びてくる。
私の手首を掴んで引いて、縋るみたいにぎゅっとその腕で抱きしめた。
< 64 / 160 >

この作品をシェア

pagetop