【続編】ふたりの恋のそだてかた。

――……

「では、本日のラストシーン撮影入ります!」

19:00。
喫茶店の大窓の外は、日が落ちて暗い。街灯と、向かいの店の明かりが消灯した店内に差し込んで視界を保証している。

――と言うのは演出で、実際には補助光や店奥から照明を当てているからそれなりに明るい。

今日最後の撮影は、1話ラスト。
婚約者の浮気発覚に悩んで涙する美咲に、侑征が迫るシーンだ。


「“……っ、ぅ……どうして……”」

客席の一席に座って、美咲はスマホを握りしめて震えている。右目に、一筋の涙。
唇と肩の戦慄きは、本気で泣いている証。

ぐす、ぐすと静かな店内に低く響く嗚咽。
その死角、バックヤードの暗闇に無表情の侑征が立っている。


「“美咲さん。……泣いてるんですか?”」


声に反応して、ぴたりと止む嗚咽。
ゆっくりと振り返った視線の先にいる俺を見つけて、ガタンと椅子が音を立てる。

驚いて、少し怯えているような美咲の表情。
“誰かいると思わなかった”そんな気持ちと、本能的な危険察知がないまぜになっているかのようだった。

「“侑征くん……?いたんだ……”」

慌てて涙を拭って、スマホを置く。
取り繕おうとした笑顔は、間に合っていない。

「“ずっといましたよ?でも美咲さん、気付かないから”」


淡々と、単調に。
表情は絶対に変えない。
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