【続編】ふたりの恋のそだてかた。
「“あ、そうだ!侑征くん。ごめん、生クリーム切れちゃったから、それ終わったら買ってきてくれる?”」

ハッとした顔をした美咲が、何も知らずに侑征の方を向いて明るく笑う。


『この時の侑征は、美咲から視線をもらえるだけで嬉しいの!でも歪んでるから、すぐ嬉しそうにしない。
ちょっと間を置いて、それからゆーっくり口角上げるイメージで笑って!目は動かしちゃダメ!』


瑠奈の言葉を反芻しながら、ほんの少し口を開く。
手を止めて、一瞬の間。

練習した通り、口元だけを静かにゆっくりと吊り上げる。

「“はい、わかりました。
……すぐに行ってきます”」

「――カット!」

その声に、ドッと疲労感が襲う。
たったこれだけのシーンなのに、ものすごく消耗した気がする。

「うん、いいね。瀬名くん。
モデルの経験が生きてるのか、それなりに雰囲気出てる。
特に細部にまでこだわった動きがいい。それ、今後も継続して」

椅子に足を組んで座るハジメさんが、淡々とそう言った。

「……はい、ありがとうございます」

モデルじゃなくて、瑠奈の影響。
そんなことは言えないけれど心の中で訂正して、そのおかげで乗り切れたことに安堵する。

「このまま本番撮って、続けよう。
イケそうだから日が落ちたら、1話ラストのシーンも撮っておこうか」

テキパキと飛ぶ指示で、撮影が再開する。
まだまだ完全に安心はできない。一先ず、なんとか今日を終えないと。

微調整にバタつく中、ひとり息を吐く。

「――……」

そんな俺を、御伽蘭子の温度のない目がじっと観察していた。
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