君が感情をくれたから
 「じゃあね、凪くん!また明日!」
 午後の授業とHRが終わり、僕が帰ろうとすると、友達と楽しそうにおしゃべりしていた彩葉さんが笑顔で手を振ってきた。
 「うん、また明日・・・」
 転校初日、友達が出来たことがない僕に「また明日」を言い合えるほどの仲の人が出来たのは大きな進歩だと言えた。

 「ただいま・・・」
 「おかえり。学校はどうだった?」
 家に帰ると、心配そうな顔をした父さんがそう聞いてきた。
 僕は今まで何度かいじめまがいのもの受けてきたから、新しい学校でうまくやれたか不安なのだろう。
 「友達、ができたよ」
 「そうか・・・。それならよかった」
 父さんは嬉しそうだ。
 初めての友達が出来た、僕よりも・・・。
 「クラスは、どんな感じだ?」
 「・・・明るい人が、いっぱいな感じ」
 僕が入ったクラス、2-3は笑顔の人が多かった。
 みんな仲が良さそうで、休み時間になるたびにみんなでおしゃべりをしていた。
 僕みたいな人間が入るには不向きの明るいクラスだ・・・。
 「楽しかったか?」
 「・・・うん」
 楽しかったか楽しくなかったでいえば、きっと、楽しかっただろう・・・。
 僕には、楽しいが分からないけど・・・。
 父さんは、僕が感情の起伏が少ないことを知らない。
 もしかしたら、気づいてるかも知れないけど・・・。
 僕は父さんに心配をかけないように、感情があるふりをしていた。
 「僕は、部屋に行くね」
 「あぁ」
 僕は、父さんから逃げるように自分の部屋に向かった。
 扉を開けて中に入る。
 必要最低限の物しかない空っぽに近い部屋だった。
 僕の、心みたいに・・・。
 ・・・それはないか。
 僕の心には必要最低限の物も入っていない・・・。
 感情というものを知ろうとして、鞄に入っていた本を取り出して開いたけど、集中出来なかった。
 頭に浮かぶのは、彩葉さんのことだった。
 『凪くん!』
 僕と正反対なタイプの人。
 明るくて、天真爛漫。
 感情がすぐに顔が出る彼女・・・。
 自分もいつか彼女みたいになれるだろうか・・・。
 それは無理だろうけど、そばにいれば何かキッカケが出来るかも知れない・・・。
 彩葉さんは僕の真っ暗な心を照らしてくれる光のような存在になってくれる・・・。
 そんな気がした・・・。
 
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