君が感情をくれたから
 「おはよう、彩葉!」
 「おはよう!」
 教室に着くと、みんなが話しかけてくれる。
 やっぱり、学校は楽しいなぁ。
 まだちょっと体がだるいけど、来て正解だった。
 「そういえば知ってる?転校生が来るらしいよ」
 「そうなんだ」
 「そうらしよ。職員室で先生達が話してるのを聞いた子がいるんだって。しかも、私達と同じ二年生」
 「へぇ」
 転校生か・・・。
 お友達になれたらいいなぁ。
 そういえば、登校してるときに見たことのない男の子がいた気がする。
 ネクタイが二年生の色だったから、彼なのかもしれない。
 ーガラガラガラ
 教室のドアが開いて担任の佐藤先生が入ってくる。
 もう、HRの時間か・・・。
 立っておしゃべりをしていたクラスメイト達が一斉に席に着く。
 「みんな、おはよう。早速なんだが、今日からこのクラスに新しい仲間が加わることになった。静海、入ってきていいぞー」
 先生が外に向かって呼びかけると、誰かが教室に入ってくる。
 入ってきたのは、登校中に見かけた彼だった。
 「・・・!」
 まさかうちのクラスに入ってくるとは思っていなかったから、驚いて固まってしまう。
 そんな私を気にも留めず、彼は口を開いた。
 「初めまして。今日からこのクラスでお世話になることになりました、静海凪(しずみなぎ)といいます。これからよろしくお願います」
 一瞬の沈黙の後、パラパラと拍手が湧き起こった。
 「じゃあ、静海はあそこの席、花﨑の隣の席に座ってくれ」
 佐藤先生が指したのは窓側の一番後ろの席で、私の隣だった。
 これは、仲良くなるチャンス・・・!
 「初めまして、静海さん!私、花崎彩葉(はなさきいろは)って言います。よろしく!」
 「・・・よろしくお願いします」
 席に着いた静海さんに若干前のめりに話しかけると、彼は表情を変えずただ淡々と言葉を返してきた。
 心のガードが堅い系の子かぁ・・・。
 それでも諦めないけど・・・。
 「静海さん、静海さんは好きな物とかある?」
 「特には・・・」
 「じゃあ、苦手な物は?」
 「特に・・・」
 「特技とか・・・」
 「もういいですよ・・・」
 話の種を探そうと、どんどん質問していると急に話を遮られた。
 「僕と、仲良くしようとしてくれなくていいですよ。それに、僕と仲良くなったって良いことは何もないですよ・・・」
 「・・・」
 彼の顔には何も浮かんでおらず、無だった。
 何を考えているのか、分からなかった。
 2人の間には、気まずい沈黙だけがあった。
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