君が感情をくれたから
 「僕と、仲良くしようとしてくれなくていいですよ。それに、僕と仲良くなったって良いことは何もないですよ・・・」
 それを口にした瞬間、彼女、花﨑彩葉さんは少しだけ顔を曇らせた。
 ・・・急にこんなことを言われても困るし、感じ悪いよね。
 でも、それが僕の本心だった。
 実際、僕と一緒にいて良い思いをした人なんていないだろう。
 僕と花﨑さんの間には気まずい沈黙が流れている。
 「静海さんは、私と仲良くなるの、嫌?」
 彼女は何を思ったのか、突然そんなことを聞いてきた。
 「・・・」
 別に、彼女と仲良くなるのが嫌なわけじゃない。
 なんて返事をしようか迷っていると、花﨑さんは無言を肯定と見なしたのか、「そっか、そうなんだ・・・」と傷ついた顔をしている。
 「・・・別に」
 いろいろ考えた末に出てきたのは、そんな言葉だった。
 「え?」
 「別に、嫌なわけじゃないです」
 そう言うと彼女は花が咲いたような笑顔になり、僕の手を握ってきた。
 「よかったぁ。じゃあ、これからよろしくね!静海くん!」
 ・・・素直な子だな。
 感情がすぐ顔に出る。
 それがうらやましい、気がした・・・。
 僕もいつか、こんな風になれるのだろうか?
 自分の心にそう問いかけたが、帰ってきたのは「無理だ」の一言だった。
 「ねぇ静海くん、私のことは好きに呼んで良いからね!」
 「・・・わかりました」
 好きなように呼んで良いって、一体どう呼ぶのが正解なんだ・・・?
 誰かのことを、名字さん付けでしか呼んだことがない僕には難しい・・・。
 とりあえず、花﨑さんで良いか。
 「じゃあ、改めてこれからよろしく!静海くん!」
 そう言って、花﨑さんは手を差し出してくる。
 「よろしく、お願いします・・・」
 そっと、彼女の手を握る。
 その手は、僕でも驚くほど細かった。 
 
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