海から届いたお守り

海のそばで育った少女

七月の終業式の日。

神志那凪沙(こうじななぎさ)は、いつもより少しだけ早く家に帰った。

玄関を開けるなり、

「ただいま!」

と声をかける。

ランドセルを下ろす。

それから、ほとんど間を置かずに水着とタオルを手に取った。

「行ってきまーす!」

家族の返事を待つより先に、凪沙は玄関を飛び出した。

家のすぐ目の前には、海がある。

佐賀関の海。

凪沙にとっては、特別な場所ではなかった。

朝起きれば、そこにある。

学校から帰れば、そこにある。

嬉しい日も、悲しい日も、何もない日も。

いつだって、海はそこにあった。

砂浜を裸足で走る。

波が足首に触れる。

夏の日差しを受けた海は、きらきらと光っていた。

凪沙は慣れたように海へ入っていく。

水の中に潜る。

水面から差し込む光。

揺れる海藻。

小さな魚。

水の中では、学校で聞いた声も、友達の笑い声も遠くなる。

聞こえるのは、自分の呼吸と、水の音だけだった。

凪沙は海の底を覗き込む。

綺麗な貝殻を見つける。

丸くなった小さなガラスを見つける。

それを拾い上げる。

シーグラス。

凪沙にとって、それは宝物だった。

家に持ち帰って、小さな箱にしまう。

一つ。

また一つ。

海からもらった宝物が、少しずつ増えていく。
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