海から届いたお守り

海の子と山の子

その年の九月。

凪沙の学校では、野津原の少年自然の家で交流会が行われることになった。

佐賀関の小学校と、野津原の小学校。

どちらも子どもの数が多い学校ではない。

だからこそ、学校同士で交流する機会があった。

凪沙にとって、野津原は知らない場所だった。

海なら分かる。

魚のことも、貝殻のことも、潜ることも。

でも、山や川のことはよく知らない。

少年自然の家に着くと、見慣れない景色が広がっていた。

木々。

山道。

川。

そして、その向こうに広がる空。

「海と全然違う……」

凪沙がそう呟いたときだった。

「海って、毎日見えるの?」

声をかけてきた男の子がいた。

三村樹。

野津原で育った男の子だった。

「うん。家の前が海だから」

「家の前?」

樹は目を丸くする。

「すごいな」

「樹くんは?」

「俺は海、あんまり見たことない」

凪沙は驚いた。

「えっ、海に行ったことないの?」

「ない」

「じゃあ、何して遊ぶの?」

「川とか。自転車で山の中走ったり」

「自転車で?」

「うん。近所だから」

凪沙には、それがとても新鮮だった。

海しか知らない自分。

山と川を知っている樹。

二人は、自分の知らない世界を話した。

凪沙は海の話をした。

樹は川や山の話をした。

そのうち、二人とも笑っていた。

初めて会ったはずなのに、不思議と話しやすかった。
< 2 / 31 >

この作品をシェア

pagetop