海から届いたお守り

じいちゃんのひと言

昼ご飯が終わり、食卓には穏やかな時間が流れていた。

樹のお母さんが、空になった皿を見ながら笑う。

「本当に美味しかったです。こんなに美味しい魚をいただいて……ありがとうございます」

「いやいや、たいしたことない」

凪沙のおじいちゃんは笑いながら答える。

「佐賀関に来てもらったんじゃ。うちの海のもんを食べてもらわんとな」

「でも、本当に美味しかったです」

お母さんがもう一度頭を下げる。

「樹も、あんなに嬉しそうに食べて」

「うんうん」

おじいちゃんは樹を見る。

「よく食べる子じゃ」

「ありがとうございます」

樹が照れながら頭を下げる。

その手には湯飲み。

ゆっくりお茶を飲んでいた。

すると――

おじいちゃんが、何気ない顔で言った。

「……もう樹くん、うちに婿入りすればいいんじゃないか?」

「ぶっ……!」

樹が飲んでいたお茶を吹き出しそうになる。

「おじいちゃん!」

凪沙が真っ赤になる。

「何言ってるの!」

「だって、いい子じゃないか」

「だからって!」

樹は咳き込みながら、慌てて湯飲みを置いた。

「お、おじいちゃん……!」

お母さんも思わず笑い出す。

「まあ!」

「お母さんまで笑わないでよ!」

「だって……」

お母さんは樹を見る。

「昔から大事にしてた女の子のお家で、こんなに美味しいものをご馳走になってるんだもの」

「それとこれとは違う!」

樹の顔は真っ赤だった。

凪沙も耳まで赤くなっている。

「もう……おじいちゃん、ほんとにやめて」

「何を恥ずかしがっちょるんか」

おじいちゃんは楽しそうに笑った。

「冗談じゃ、冗談」

そう言いながらも、どこか嬉しそうだった。

樹はもう一度お茶を飲む。

今度は慎重に。

凪沙が小さな声で言った。

「……ごめんね」

樹は首を横に振った。

「ううん」

少し間を置いて、

「……でも、びっくりした」

凪沙は思わず笑ってしまう。

「私も」

二人が笑う。

その様子を見て、おじいちゃんも満足そうに笑った。

海の町の昼下がり。

少しだけ騒がしくて、少しだけ恥ずかしくて。
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