海から届いたお守り

野津原の夜

その日の夜。

家に帰った樹は、ポケットからシーグラスを取り出した。

お母さんが気づく。

「樹、それどうしたの?」

「今日、もらった」

「誰から?」

樹は少し照れた。

「交流会で一緒だった女の子」

「へえ。どんな子?」

樹は少し考えた。

どう説明したらいいのか分からなかった。

海のそばで育った女の子。

海の話をすると、目が輝く女の子。

笑うと明るいのに、ふとした瞬間に寂しそうな顔をする女の子。

樹はシーグラスを見つめた。

「……海みたいな子」

お母さんが笑う。

「海?」

「うん」

「でも樹、まだ海をちゃんと見たことないでしょう?」

「うん」

樹は少し考えてから続けた。

「でも……その子の表情が、海みたいだった」

お母さんは、静かに息子の話を聞いていた。

「笑ってるときも、話してるときも……なんか、海みたい」

樹はシーグラスを握った。

「これ、大事にしたい」

「じゃあ、ネックレスにしてみる?」

「できる?」

「教えてあげる」

お母さんは紐を用意した。

樹は不器用だった。

なかなかうまくできない。

「できない……」

「大丈夫。ゆっくりでいいよ」

お母さんは急かさなかった。

一度やり直す。

またやり直す。

そして、ようやく――

「……できた!」

樹が顔を上げた。

お母さんは笑った。

「よかったじゃん」

樹は完成したネックレスを手に取った。

淡い色のシーグラスが、胸元で小さく揺れる。

「これ、お守りにする」

「大切にしなさいね」

「うん」

樹は頷いた。

それから、そのシーグラスはずっと樹のそばにあった。
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