幼なじみからの独占愛に、もう逃げられない
昼休み。
 わたしが図書委員の仕事で資料を運んでいると、隣のクラスの男子が声をかけてきた。

「七瀬さん、持つよ」

「え、ありがとう」

「いつも手伝ってくれるお礼」

 にこっと笑われて、わたしも自然に笑い返す。
 すると、その人が少し照れたように言った。

「七瀬さんってほんと可愛いよね。やさしいし」

「えっ」

 突然そんなことを言われて、言葉に詰まる。

 そのとき。

「へえ」

 ひやりとするほど静かな声がして、空気が変わった。

 振り向くと、そこには咲也が立っていた。

 笑っている。
 でも、目が全然笑っていない。

「神谷くん」

 男子が気まずそうに名前を呼ぶ。
 咲也は穏やかに近づいてきて、わたしの持っていた資料を片手で軽く取り上げた。

「ありがとう。でもその役目、もういいから」

「え……」

「結愛のこと、頼みたくないし」

 やわらかな言い方なのに、はっきりした拒絶だった。

 男子はさすがに空気を読んだのか、「じゃあ、俺行くね」と苦笑して去っていく。

 わたしは慌てて咲也を見た。

「ちょっと、今の言い方……」

「なに」

「冷たかった」

「そうでもないよ」

「そうだよ」

 言い返すと、咲也はふっと目を細めた。

「じゃあどうしろっていうの。結愛が他の男に笑いかけてるの見て、余裕あるふりでもしろって?」

 低い声。
 抑えているのに、嫉妬が滲んでいるのがわかる。

「咲也……嫉妬してるの?」

「してる」

 即答だった。

「昨日あれだけ言って、まだわかってないの」

 そう言って、咲也はわたしの手首をそっと引く。
 強くはないのに、逆らえないまま人気のない階段の踊り場まで連れていかれた。
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