幼なじみからの独占愛に、もう逃げられない
午前の授業が終わって、移動教室の時間になった。

 廊下に出ると、人の流れの中で前の子が急に立ち止まり、わたしはよろけそうになる。

「わっ……」

 その瞬間、ぐいっと腕を引かれた。

「危ない」

 気づけば、咲也の胸のすぐ近くにいた。
 片腕で支えられるみたいに引き寄せられて、息が止まる。

「さ、咲也……」

「ちゃんと前見て」

 言いながらも、すぐには離してくれない。

 近い。近すぎる。
 制服越しに伝わる体温が熱くて、まともに顔を見られない。

「もう大丈夫だよ」

「俺は大丈夫じゃない」

「え?」

「結愛が転びそうになるの、心臓に悪い」

 真顔でそんなことを言うから、また顔が熱くなる。
 咲也は小さく笑って、わたしの手を取った。

「人多いし、このまま」

「このままって……手、つないでる」

「はぐれたら困る」

「子どもじゃないんだけど」

「知ってる。でも離したくない」

 さらっと落とされた言葉に、胸がぎゅっとなる。

 わたしの手を包む咲也の指は大きくて、やさしい。
 でも、しっかり逃がさないみたいに握られていて、その意味を考えると恥ずかしくなる。
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