幼なじみからの独占愛に、もう逃げられない
わたしは昔から、困っている人を見ると放っておけない。

 プリントを運んでいる子がいれば手伝うし、忘れ物をして困っている子がいれば一緒に先生のところへ行く。頼まれごとも断るのが苦手で、気づけば自分のことは後回し。

 咲也には、いつもそこを怒られる。

「結愛、昼休みなのにまた仕事してたの」

「委員の子が大変そうだったから」

「自分のごはんは」

「あ」

「食べてないんだ」

 呆れたようにため息をつかれて、わたしは肩をすくめる。
 すると咲也は無言で購買のパンを差し出した。

「食べて」

「え、咲也の分じゃないの」

「結愛の分」

「なんでそんなの持ってるの?」

「こうなると思ったから」

 先回りされている。
 しかも、わたしの好きな味ばかり。

「ほんとにすごいね、咲也って」

「なにが」

「なんでもできるし、気も利くし、人気あるし。完璧だなあって」

 そう言うと、咲也は一瞬だけ表情を止めた。

「完璧じゃないよ」

「え?」

「少なくとも、結愛の前では」

 低く落ちた声に、胸がざわつく。
 だけど、その意味を考える前に、廊下の向こうから女子の声がした。

「神谷くーん、次の体育、一緒のチームになろ」

 咲也はそちらを見て、いつもの愛想のいい笑みを浮かべる。

「ごめん、もう決まってる」

「え、誰と?」

 その瞬間、咲也はわたしの肩を軽く引き寄せた。

「結愛と」

 ぴたりと空気が止まる。

「さ、咲也っ」

「なに。ほんとのことでしょ」

 たしかに同じチームだけど、言い方というものがあると思う。

 頬を熱くしながら見上げると、咲也はどこか満足そうに目を細めていた。

 その視線が、少しだけ怖いくらいまっすぐで。
 なのに、嫌じゃなかった。
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