そこにあったはずの愛
番外編9-1「クリスマスの夜」玲依、

窓の外、街が、いつもより煌びやかに輝いていた。

 

イルミネーションの光。

浮かれた音楽が、遠くから微かに聞こえてくる。

 

道行く人々は、誰もが、隣に誰かを連れていた。

 

 

クリスマスだからといって、何が変わるわけでもない。

そのはずだった。

 

 

ソファに座り、スマホを、何度も手に取った。

 

特に、用があるわけじではない。

ただ、なんとなく、画面を確認してしまう。

 

 

気づけば、無意識に、連絡を待っている自分がいた。

 

その事実に、遅れて気づいて、驚いた。

 

 

すぐに、思い直す。

 

契約に、そんな特別な日は含まれていない。

凛にとっては、街が浮かれているだけの、ただの一日だろう。

 

わざわざ会いに来る理由なんて、どこにもないはずだった。

 

 

「クリスマスを、凛と過ごしたいの?」

 

声に出して、自分自身に問いかけてみた。

 

問いかけた瞬間、可笑しくなった。

 

自嘲するように、小さく笑う。

柄にもないことを、考えている。

 

 

体だけの関係。

そう割り切っていたはずなのに、今、頭の中を占めているのは、もっと別の、名前のつけられない感情だった。

 

 

案の定、その日は、何の連絡も来なかった。

 

夜が更けても、スマホの画面は、静かなままだった。

 

 

一人の部屋で、窓の外の光を、ぼんやりと眺め続けた。

 

抱かれるだけでも、よかった。

理由なんて、なんでもよかった。

 

ただ、今日という日を、一人で過ごしたくなかった。

 

 

そんな思いが、抑えきれないまま、胸の奥で渦巻いていた。

 

 

契約という建前の中に、こんな感情の入る余地はないはずだった。

 

それなのに、今、確かに、特別な日を、あの人と過ごしたいと願っている自分がいた。

 

 

その願いを、誰にも言えなかった。

言えば、この関係の均衡が、崩れてしまう気がした。

 

 

窓の外のイルミネーションは、変わらず輝き続けていた。

 

その光を眺めながら、静かに募る想いを、誰にも知られないように、そっと胸の奥にしまい込んだ。

 

 

クリスマスの夜は、いつもより長く、そして、いつもより静かに過ぎていった。
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