クールな氷の王子は無自覚地味子を独占したい
彼女たちは教室に入るなり、不自然に視線を泳がせ、まっすぐに私の席の方へと目を向けた。

え?

目があった瞬間、彼女たちはあからさまにヒソヒソと耳打ちを始める。

「……ねえ、あの子でしょ? 体育祭で氷室くんと並んで走ってたの」

「マジで言ってる? パッとしないメガネじゃん……なんであの子が?」

「実行委員で一緒だったから調子乗ってんじゃないの? 氷室くんが相手するわけないのにねー」

故意に聞こえるように音量を落とした、刺々しい言葉。
教室の喧騒に紛れ込んでいるはずなのに、その低い囁き声だけが、やけに鮮明に耳に届いてしまう。

「……っ」

思わず身をすくめると、葵とゆいもその異様な空気に気づいたようで、険しい顔で他クラスの女子たちを睨みつけた。

「……なにか用?」

だけど、彼女たちはビビるどころか、フッと鼻で笑うだけだった。

「別に〜? なんでもなーい」

「ていうか、何あの顔。怖ーい」

葵やゆいの抗議すら「格下の女子が何か言ってる」程度にしか思っていないようで、彼女たちは肩をすくめ合いながら、小馬鹿にしたような笑みを浮かべる。

「勘違いしない方がいいよー。冴くんが優しいからって、自分が特別だと思わないことね」

捨て台詞のようにそれだけ言うと、彼女たちはひらひらと手を振りながら、優越感に浸った様子で教室を出て行った。
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