クールな氷の王子は無自覚地味子を独占したい
5時間目の授業が終わり、放課後。
私は葵たちと帰る準備をするため、自分の下駄箱へ向かった。

「あ、ごめん! 私、教室に英語の教科書忘れてきたから取ってくるね」

「了解ー! 下駄箱のところで待ってるね」

ふたりと別れ、一人で昇降口へ向かう。
自分の靴箱を開け、上履きからスニーカーに履き替えようとした、その時。

「……ん?」

靴箱の奥、私のスニーカーのすぐ脇に、一枚の紙きれが突っ込まれているのに気づいた。
折りたたまれたルーズリーフの切れ端。

なんだろ……?

首をかしげながら何気なく開いてみた私は、そこに書かれた文字を見て、思わずパチパチと瞬きをした。

『調子に乗るな』

短く、乱暴な字でそう書かれていた。

「えぇ……」

何事もなかったかのように笑顔で葵たちの元へ走っていったけれど、私の胸の奥には、ほんの少しだけ不穏な暗雲が立ち込め始めていたのだった――。

思わず声が漏れる。
嫌がらせにしては古典的だし、直接的な言葉すぎて、悲しさよりも拍子抜けした驚きの方が勝ってしまう。

……これ、やっぱり氷室くんファンクラブの人かな

犯人を疑う術もないし、靴にイタズラをされたわけでもない。
私は「はぁ……」と小さく息を吐くと、その紙きれをキュッと小さく丸めて、ポケットに押し込んだ。

気にしたら負けだ。
友達を心配させたくないし、大ごとにする必要もない。

「お待たせー!」

何事もなかったかのように笑顔で葵たちの元へ走っていったけれど、私の胸の奥には、ほんの少しだけ不穏な暗雲が立ち込め始めていたのだった――。
< 39 / 43 >

この作品をシェア

pagetop