みかん箱

補講が終わった後、トシタカはいつものように颯爽と自転車で帰っていった。
昨日は、盛大に大転倒をしたので、気をつけろっていったけど、右手を高く挙げて去っていった。
俺は、靴を履いて外に出た。
煙草を吸ったみたいに、息が白くなる。
校舎もほとんど灯りが消えた。
生徒たちもみんな帰っていった。
そんな中、川瀬が一人でいた。チェックのマフラーを巻いて、ブーツを履こうとしている。

俺は、どうしようか迷った。
落ち着け。
いきなり告白するわけじゃない。
だけど、反応が怖い。
乾いた冬の空気に、喉が渇く。
なんで、昼の弁当にニラなんかいれたんだ!
そんなこと考えたりする。
俺は、川瀬に声をかけた。
川瀬は、ちょっと驚いたみたいだ。
俺は、一生懸命いろんな話をした。
好きな映画の話やら、安全地帯の話。
川瀬の反応が気になる。
教室みたいに俯き加減だから、わからない。
けど、沈黙が怖いからひたすら喋り続けた。
二人の家の別れ道まで、気がついたらきた。
なんだか時間が過ぎるのが早いような。
話してる間は、話題が尽きないかばかり考えて、長く感じたのに。
別れ際、ありがとっていってくれた。

俺は、ホカホカした気持ちで帰っていった。

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