攻略対象の想い人は、ナレ死予定の転生聖女 欠損を肩代わりしたら、なぜか曇った三英雄が執着してくるのですが?
 普段はフェドクスに、お願いしているけれど――。
 ここで彼の好意を断るのは、忍びない。

 ガザンは女性の扱いにも手慣れているし、サキュバスの一件で随分と心を許してもらえるようにもなった。

 きっと、問題ないだろう。

「お願い、できますか」
「任せとけ」

 私は着せ替え人形になる決意を固め、心を無にした。

 ――この世界に転生してからは、誰かに着替えさせてもらうのが当たり前だった。

 前世の記憶を持つ私は、自分のことは自分でするべきだと思っていたから、幼い頃はそのギャップに戸惑っていたけれど――。
 手足を動かさずに済むと思えば、気楽なものだ。

 ガザンは丁寧な手つきでボタンを外し、夜着を脱がせた。
 何度か手が止まったのは、全身に刻み込まれた古傷を目にしたからだろう。

 鞭で叩かれ、炎で爛れた、見るも無惨なおぞましい傷口の数々。
 それを目にしては、悔しそうに息を呑む。

 ――その反応は、私を大切に思ってくれる幼馴染と瓜二つだった。
< 120 / 203 >

この作品をシェア

pagetop