攻略対象の想い人は、ナレ死予定の転生聖女 欠損を肩代わりしたら、なぜか曇った三英雄が執着してくるのですが?
「今まで、手を抜いてたのか?」
「火事場の馬鹿力だ」
「なんだそれ?」

 フェドクスは私に教えてもらったとは、言わなかった。
 彼も幼い頃に意味を説明してはあげたが、覚えてはいないのかもしれない。
 それか、特別な思い出だと思い込んでいるからこそ、他人に奪われたくないのか……。

「こほん。私はあなたへ、闘技大会に出て頂きたいのです!」

 すっかり仲間内で会話に花を咲かせていたところ、咳払いをした女性がフェドクスに向かってある提案をする。
 しかし、彼はきっぱりと断ってしまった。

「断る」
「即答かよ……」

 あまりもの素早さに、ガザンが引いている。
 彼は辺境伯に睨みを聞かせながら、淡々と女性を説得するための理由を口にした。

「俺の剣術は、見世物ではない。エミリエを守るためのものだ」

 ドヤ顔で宣言された女性は、ポカンと口を開けて呆然とその場に佇んでいる。
 彼女からしてみれば、「エミリエ」と呼ばれた存在が誰かもわからない状態だ。

 そうした反応をするのは、無理もなかった。
< 138 / 207 >

この作品をシェア

pagetop