攻略対象の想い人は、ナレ死予定の転生聖女 欠損を肩代わりしたら、なぜか曇った三英雄が執着してくるのですが?
 ――帰る前に、異能の効果を確かめなくちゃ。

 私はさっそく、この男を実験台として利用すると決めた。

「幻惑蝶」

 ひらりひらりと、どこからともなく眩い光を放つ黄金蝶が現れた。
 鱗粉を振り撒きながら、それは男の周りを飛び回る。

「いひひ……っ。こりゃ、上玉じゃねぇの……!」

 男は目の前にいた私に狙いを定め、己の異能を発動させようとして――失敗した。

「な……!? 力が、使えない……!?」

 その直後、錯乱した聖職者は不思議なことを口ずさんだ。

「俺の幻惑が、奪われた! あの野郎……! 見つけたら、ぶっ殺す!」

 彼は屈強な男に自分の力が奪われたと、大騒ぎし始めた。
 明らかに様子のおかしい男性を目にした人々は、慌てた様子でカフェから飛び出していく。
 どうやら、誰かを呼びに行ったらしい。

 あの男がどうなるか、最後まで見届けたい。

 ――だけど……。
 私には、悠長に観察している時間などないのだ。

 ――早く、宿に帰らなきゃ。

 騒ぎに紛れて、姿を消そうとした時だった。
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