攻略対象の想い人は、ナレ死予定の転生聖女 欠損を肩代わりしたら、なぜか曇った三英雄が執着してくるのですが?
「はぁ……。仕方ねぇなぁ……」

 言い争う2人を横目に、ガザンは私を抱き上げ、目的地に向かって歩き出す。

 ――左腕を駄目にする前の辺境伯に抱き上げられたら、きっと恐怖に怯え、幼馴染に助けを求めていた。

 だけど……。

 今の彼に、敵意は感じられない。

 私はこのままでいいかと考え、ガザンの胸元へ身体を預けた。

 ガザンは私を宿屋の一室に運び込むと、鍵をかけた。
 恐らく、誰にも邪魔をされずに2人きりで落ち着いて話がしたいという、意思の現れだろう。

 ――数分くらいなら、ルドルフとフェドクスは何も言わないはずだ。

 大声を上げれば、木製の扉は外側から勢いよく破壊される。
 きっと、大丈夫だ。

 私はそう信じて、何事もなかったかのように彼の腕の中に抱かれていた。

「随分と、落ち着いてんだな。男と2人きりだってのに……」

 どうやら彼は、そんなこちらの反応が気に食わなかったようだ。
 これまでの威嚇が嘘のように、不思議で仕方ないと言わんばかりの表情で問いかけてくる。
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