転生聖女の労働環境改革〜処刑まで残り180日。ブラック教会をホワイト化して生存ルートを勝ち取ります。監視役の騎士様がいつの間にか私にだけ過保護な最強の番犬に!
「ところで。今日は少し珍しい差し入れが届いています」
そう言ってアスランが懐から取り出したのは、小さな手紙だ。
封筒には、子どものような丸い文字で「せいじょさまへ」とある。
「どうしても手紙を渡したいと」
封を切ると、中からは色鉛筆で描かれた花と太陽の絵、そして不揃いな文字で「ありがとう またきれいなおうたききたいな」と書かれていた。
理央はしばし、その手紙を見つめていた。
「……なんで、ありがとうなんて言われてるんだろう」
「癒しを感じたんですよ。あの光と、祈りの歌に」
「ただ教わった通りにやっただけよ」
「その、ただ、が、心を動かすこともあるのです」
アスランの言葉に、理央は小さく息を吐いた。
作られた偶像。
けれど、今ここにいる自身が、誰かの心を動かした。
それだけで、少しだけ胸が温かくなる。
「実際、治癒にも似た効果が現れた者もおります」
「それはたぶん、プラシーボ効果的なやつだと思うけど」
「はて、ぷらしぼ?」
「偽薬みたいなもののこと。まあ歌うくらいは……人前で披露しなきゃいけないなら真面目に練習しないとね」
「その心意気、神様も微笑んでると思いますよ」
「いやたぶん、あの神様、私のこと無視してるわ」
そんな冗談を交わしながらも、理央はまた机に向かう。
読みかけの儀式書に、指を滑らせ、ふと思う。
収穫祭を過ぎて、新年を迎えるまで、あとどのくらいの時間が残されているのだろうか。
あの日、百八十日と宣告された処刑の日。
それは、無情にも新しい年を迎える前にやってくる。
業務改革に奔走し、収穫祭を終え、幽閉されてすでに二週間。
――残された時間は、もう三十日を切っていた。