転生聖女の労働環境改革〜処刑まで残り180日。ブラック教会をホワイト化して生存ルートを勝ち取ります。監視役の騎士様がいつの間にか私にだけ過保護な最強の番犬に!
幽閉生活も、気づけば二週間を越えていた。
理央は今日も塔の小さな部屋に身を置き、活字の海を揺蕩っている。
幼い少女リオが残した記録はすでに一通り目を通したが、今では、それ以外もアスランに運び込んでもらい、古い神学書や儀式文書にも手を伸ばしている。
しかし、会議録に予算案など、理央が一番確認したい書類は、手にすることを禁じられてしまった。
「こっちはずいぶん堅苦しいわね。読んでるだけで信仰心が減りそう……」
愚痴をこぼしながらも、文字の海を泳ぐ。それ以外にする事が無いからだ。
食べるか、読むか、寝るか、もしくは筋トレである。
この身体で覚醒して以降、毎晩のスクワット効果か、多少歩き回っても、息切れはしなくなっていた。
幽閉される直前まで、たった一人で裏の花壇を耕していたのだ。
収穫祭の練習もまた、筋力トレーニングおよび体感トレーニング効果があったといえよう。
今の理央は、健康的でしなやかな筋肉を有した、成人少し手前の――女性といってももう差し支えない身体である。
「……なるほど、これが清めの式の正式な所作、っと」
ぼそぼそと口に出しながら、腕を掲げ、足を交差させていたところに、扉がノックされる。
「失礼します、聖女様」
現れたのはアスランだった。
今日もトレイに大盛りの昼食を携えている。
「配膳係、ご苦労さま。昇進はまだ?」
「それはどうか、聖女様の方から王家へご進言してみてください」
軽口を叩きながら、アスランは手慣れた様子で食事を机の端に並べた。
「教会じゃなくて? フォリフォンヌ王国式の皮肉ってこと?」
「僕としては、聖女式のつもりでしたが」
思わず笑いがこぼれる。
幽閉生活の中で、アスランとの軽妙なやり取りは、理央にとって数少ない救いだった。